全てのランを種から栽培していたころ

今は蘭をクローンで増殖することが一般的になりましたが、1980年代以前にはまだまだクローンの技術が普及していなかったため、交配したものから種をとり、その種をまいて、胡蝶蘭を増殖していました。胡蝶蘭の場合、株分けができないので、実生(種から生まれること)で増やすしかなかったのです。

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<上写真>オレンジ内の茶色い殻の中に種が入っています。周辺の緑のふくらみがいくつかあるものが種になる前段階です。

今のように同じものを増殖するクローン増殖と違い、ひとつひとつ交配をし、新しいものが毎回生まれるため、めずらしいものも多く、色彩もカラフルでした。

クローンは、人間で言えば、美しいダイアナ妃の細胞から、『100人の同じダイアナ妃』をつくるやり方。

交配は、様々なお父さんお母さんのお花のかけ合わせから、『世界にひとつだけの花』がうまれるやり方。人間が一人一人に個性があることと同じですね。

当時は、よりよい品種を開発する「育種」のためというよりも、増殖のために交配をやらざるを得なかった時代です。創業者の研修当時から胡蝶蘭の交配や育種を始めたのがきっかけで、40年以上育種を続けた結果、世界でも評価される森田洋蘭園のオリジナル品種ができていくことになります。

オリジナル品種を1つ完成させるには、8〜10年ほどの期間を要し、手間もコストもかかるため、ほとんどの胡蝶蘭生産者はクローン栽培に移行してしまいました。それでもなお森田洋蘭園ではオリジナル品種でこだわりの美しさをお届けするため、交配にこだわっています。